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コラム
2025年06月10日
人気コラム【専門建築士監修】家が傾いた!保険は使える?補償範囲を徹底解説
目次
1・東日本大震災以降、液状化被害も地震保険で補償されるように
かつては、地震の液状化による被害は保険の支払対象として認定されにくいものでした。
しかし、2011年東日本大震災以降に認定基準が緩和されて、保険の支払を受けやすくなりました。
建物の主要構造部に大きな損傷がなくても、お家の傾きだけで全損認定されている例もあります。
2・火災保険と地震保険:適用範囲の違いを理解する
家の傾きが発生した場合、どの保険が適用されるのかは、原因によって異なります。
地震保険について
- 地震、噴火、津波による損害を補償する保険です。
- 液状化現象による家の傾きは、地震保険の対象となります。
- 損害の程度に応じて、全損、大半損、小半損、一部損と認定され、保険金が支払われます。
火災保険について
- 火災、落雷、風災、水災などの損害を補償する保険です。
- 地震による液状化現象は、火災保険の対象外です。
- ただし、火災保険に地震特約を付帯している場合は、特約の範囲内で補償されることがあります。
火災保険は主に火災や自然災害(地震を除く)による損害をカバーしますが、地震保険は地震特有のリスクに対応するために設計されています。
つまり、地震や液状化による家の傾きは、原則として地震保険で補償されると覚えておきましょう。
一般的に、地震保険は火災保険に付帯する形で加入しますが、
お家の傾きで困り、当社の専属建築士に相談くださったお客様の保険内容を確認してみた所、
地震保険に加入した覚えがなくても、火災保険の地震特約に加入しておられ、
結果、工事費用全額を保険で賄えたケースもありましたので、家の傾きが気になった際は是非加入しておられる保険会社や、家の傾き専門建築士に相談されるのをおすすめします。
3・地震保険の補償範囲:どこまでカバーされる?
地震保険は、地震による建物の損害に備えるための重要な保険ですが、その保険金額には一定の制限があります。
一般的に、地震保険の保険金額は火災保険の保険金額の30%~50%の範囲内で設定されます。ただし、建物は最大5,000万円、家財は最大1,000万円が限度額となります。
地震保険では、建物の主要構造部(壁、柱、床など)の損害程度に応じて保険金が支払われるのが基本ですが、現在は、東日本大震災の教訓を踏まえ、液状化による損害も補償対象として追加されました。
次は、どの程度の傾きでどれくらいの損害と認定され、どれくらいの保険金が支払われるのか。平均的な基準を併せて見てみましょう。
4・地震保険の建物損害認定基準:全損、大半損、小半損、一部損とは?
液状化被害における保険金の支払い基準
地震保険では、建物の損害程度に応じて保険金が支払われます。
地震による損害の場合、建物の「傾斜」または「最大沈下量」によって損害程度が判定され、損害の程度は、全損、大半損、小半損、一部の損4つの損害区分で認定が行われます。
以下の表は、損害の程度の判定基準と、どれくらい保険金が支払われるかをまとめたものとなります。
尚、地震保険での損害の程度は、国の定める罹災判定とは調査方法や判定基準が異なります。
損害の程度 | 傾斜(約) | 最大沈下量 | 支払われる保険金 |
---|---|---|---|
全損 | 1度超 | 30cm超 | 地震保険金額の全額(時価額が限度) |
大半損 | 0.8度超 1度以下 | 20cm超 30cm以下 | 地震保険金額の60%(時価額の60%が限度) |
小半損 | 0.5度超 0.8度以下 | 15cm超 20cm以下 | 地震保険金額の30%(時価額の30%が限度) |
一部損 | 0.2度超 0.5度以下 | 10cm超 15cm以下 | 地震保険金額の5%(時価額の5%が限度) |
覚えておきたいポイント
- 時価: 同等の建物を新たに建築・購入するのに必要な金額から、使用期間や経過年数に応じた消耗分を差し引いた金額を指します。
- 損害認定基準: 一般社団法人日本損害保険協会が定める「地震保険損害認定基準」に基づいて、損害の程度が認定されます。
- 液状化に特化: 上記の「被害の状況」は、液状化現象による損害にのみ適用されます。
- 主要構造部の損傷: 主要構造部に重大な損傷がある場合は、通常の損害認定も行い、より高い損害程度が適用されます。
- 傾斜と沈下量: 傾斜と最大沈下量のうち、いずれか高い方の損害程度が採用されます。
5・申請までにチェック!知っておきたい家の傾き角度計算
5・1傾斜角度の計算方法:タンジェント(tan)を活用(専門的計算方法)
傾斜角度は、三角関数の一つである「タンジェント(tan)」を使って計算します。例えば、1メートル(1000ミリ)あたり14ミリ傾いている場合、以下の計算式で角度を求められます。
- 直角三角形をイメージ: 底辺1000ミリ、高さ14ミリの直角三角形を想定します。
- tan θ を計算: tan θ = 高さ / 底辺 = 14 / 1000 = 0.014
- 角度 θ を求める: 関数電卓や三角関数表を用いて、tan θ = 0.014 となる角度 θ を求めます。この場合、約0.8度となります。
つまり、1メートルあたり14ミリの傾きは、約0.8度の傾斜に相当します。
5・2分数から角度への変換式:電卓でサクッと計算(簡単に計算する方法)
複雑な三角関数を使わなくても、電卓やスマホアプリで簡単に角度を求める計算式をご紹介します。
傾斜を分数から角度に変換するには、以下の計算式を使います。
(傾きのミリ数) ÷ 1000 × 180 ÷ 3.14 = 傾斜角度(度)
例えば、1000分の3ミリ傾いている場合、電卓で「3 ÷ 1000 × 180 ÷ 3.14」と入力します。
計算結果は約0.17度となり、傾斜角度が分かります。
具体的な計算例
- 1000分の6ミリの場合:
- 計算式: 6 ÷ 1000 × 180 ÷ 3.14
- 計算結果: 約0.34度
このように、分子の数字を変えるだけで、様々な傾斜を角度に変換できます。
建物の傾きを自分で測る方法については、下記ページを参考ください。
6・お家の傾きの傾斜角度から、被害認定を推測する
建物の傾斜角度は、地震保険の被害認定基準だけでなく、国の災害による住宅被害認定基準(罹災判定)において重要な指標となります。
例えば、上記で計算した、1メートル(1000ミリ)あたり14ミリ傾いている場合の0.8度の傾斜は、一般的な地震保険会社では「半損」、国の基準では「半壊」と認定される可能性があります。
以下は、建物の傾きの国の基準・新築住宅を購入した後、10年間地盤の保証となる、住宅品質確保促進法(品確法)契約不適合責任・地震保険の基準について簡潔にまとめた表となります。
建物の傾き (mm/1.000mm) | 角度 (度) | 国の基準 (罹災判定) | 住宅品質確保促進法 (品確法) 契約不適合責任基準 | 地震保険基準 |
---|---|---|---|---|
3/1.000mm | 0.17 | 瑕疵の可能性 (新築住宅基準) | ||
4/1.000mm | 0.23 | 一部損 | ||
6/1.000mm | 0.34 | 瑕疵の可能性が高い (中古住宅基準) | ||
10/1.000mm | 0.57 | 半壊 | 半損 | |
15/1.000mm | 0.86 | 大半損 | ||
17/1.000mm | 0.97 | 大規模半壊 | 全損 | |
50/1.000mm | 2.86 | 全壊 |
注釈:
- 国の基準 (罹災判定):
- 地震による液状化住宅の被害程度を判定するための基準です。
- 罹災証明の発行や、被災者支援策の適用などに用いられます。
- 住宅品質確保促進法 (品確法) 契約不適合責任基準:
- 新築住宅の基本構造部分 (柱、梁、床など) の瑕疵 (欠陥) について、売主 (建設業者など) が買主に対して10年間責任を負うことを定めた法律です。
- 2020年4月の民法改正により、「瑕疵担保責任」は「契約不適合責任」に名称が変更されました。
- 新築住宅と中古住宅では、傾きの基準が異なります。
- 地震保険基準:
- 地震による建物の損害程度に応じて、保険金の支払額を決定するための基準です。
- 傾き以外にも、建物の損傷具合などによっても損害程度が判定されます。
- 傾きの単位:
- 表中の「mm/1000mm」は、1000mm (1メートル) あたりの傾きを表しています。
- 例えば、「3mm/1000mm」は、1メートルあたり3mmの傾きがあることを意味します。
※実際の損害状況や建物の構造、地盤、各保険会社の基準などによって判断が異なる場合があります。
詳しくは専門家 (建築士、弁護士など) に相談することをおすすめします。
7・保険金請求の流れと注意点
家の傾きが発生した場合、まずは保険会社に連絡し、以下の手順で保険金を請求します。
- 保険会社への連絡: 損害状況を伝え、保険金請求の手続きを確認します。
- 損害状況の記録: 写真や動画で損害状況を記録し、証拠として保管します。
- 専門家による調査: 保険会社が派遣する鑑定人や、自身で依頼した専門家による調査を受けます。
- 必要書類の提出: 保険会社から指定された必要書類を提出します。
必要書類は、保険会社によって異なりますが、一般的には以下のものが挙げられます。
- 保険金請求書
- 罹災証明書
- 損害箇所の写真
- 修理見積書
注意点として、損害の原因が地震による液状化であることを証明する必要があります。そのため、地盤調査の結果や、お住まいの地域の液状化危険度を確認できる自治体発行のハザードマップなどの情報、地震の発生直後の近隣も含めた状況写真などを集めておくことが重要です。
お客様の中には、上記の表において大半損に該当する傾きが見られたにもかかわらず、保険会社から半損という厳しい判定を受け、修繕費用の捻出にお困りの方がいらっしゃいました。
しかし、当社の専属専任建築士が保険会社の再調査に立ち会い、計測に同席した結果、無事に大半損との判定をいただくことができ、保険を活用した傾き修正工事を実施することができました。
このように、保険会社の判定結果に疑問がある場合、専門家による再調査が有効な手段となることがあります。
保険会社への連絡と並行して、ぜひ建物の傾きに精通した専門建築士への相談もご検討ください。
まとめ:もしもの地震に備えて保険内容確認や、地盤改良を検討しましょう。
液状化による家の傾きは、地震保険で補償される可能性があります。しかし、保険会社や契約内容によって補償範囲や条件が異なるため、事前に確認しておくことが重要です。
また、液状化危険地域にお家が建っている場合は、お家が建っている状態で、お住まいいただきながらも工事可能な地盤ロック工法などの液状化対策を講じることで、被害を最小限に抑えることができます。
もしもの場合に備えて、保険の内容を確認し、必要な対策を講じておきましょう。
参考情報
- 地震保険については、各保険会社のウェブサイトや、一般社団法人日本損害保険協会のウェブサイトで詳細を確認できます。
- 一般社団法人日本損害保険協会
- https://www.sonpo.or.jp/
- 国の基準については、内閣府防災情報のページ、災害に係る住宅の被害認定にて最新情報が確認できます。
- 内閣府防災情報のページ
- https://www.bousai.go.jp/taisaku/unyou.html

執筆者
お家の傾き直し専門店 株式会社 西川
代表取締役 一級建築士 一級建築施工管理技士 久門 和宏
関西大手ゼネコン・住友不動産で勤務の後、
世界遺産も手がける 創業130年の曳家に所属
データに基づいてお家にあった最適で安心安全な傾き直し工法を適正価格で提供するため、
「お客様、従業員の幸福、社会の進歩発展に貢献すること」を社訓に、
お家の傾き直し専門店 株式会社 西川 を 創業
令和7年2月 執筆